今まで様々なアルバイトを経験した。中でも楽しかったのが、風船屋でのアルバイトだ。そのお店では、店舗販売や通信販売も行っていたが、私が担当していたのは、ヘリウム風船をお祭りや遊園地で販売する仕事だった。子どもを相手にすることが多いとあって、アルバイトのほとんどは保育士や幼稚園教諭を目指す女性たちだった。
アルバイト情報誌で「お祭りや遊園地で風船を売るお仕事」と書いてあるのを見て応募した時には、とても楽しいものを想像していた。しかし実際は、夏場は炎天下で暑く、冬場は凍えるほど寒いという、なかなか厳しい現場だった。そして、ただ風船を売ると言っても1人でできるものではなく、ヘリウムガスを注入してふくらます人、風船の束を持つ人、お客さんを呼び込み、販売する人等、役割がいくつかあり、2人~5人で協力して販売していた。この”みんなで力を合わせる”という雰囲気が、なんだか学園祭のようで楽しかったのだ。
そして、この女性中心の仕事場にも、男性が社長を含めて数人いた。その数人は、皆この風船屋のアルバイト女性と結婚した。なんと確率の高いことか。学園祭で力を合わせたことがきっかけで付き合い始める”学祭カップル”という人々がいたが、彼らと同じ心理なのかもしれない。身の回りの学祭カップルは破局も早かったが、風船屋カップルは結婚後数年がたった今も、どのカップルも仲良く幸せに暮らしているのだから、風船屋のアルバイトの不思議な力を感じずにはいられない。